新しい食の選択肢「代替食品」とアレルギー:家族の食事で気をつけたいこと
新しい食の選択肢「代替食品」とアレルギー:家族の食事で気をつけたいこと
近年、健康や環境への意識の高まりから、プラントベース食品や代替肉といった「代替食品」が注目を集めています。これらの新しい食品は、日々の献立に多様性をもたらし、家族の食卓を豊かにする可能性を秘めています。
一方で、ご家族の中に特定の食物アレルギーをお持ちの方がいらっしゃる場合、「代替食品はアレルギーがあっても大丈夫なのだろうか」「製品を選ぶ際にどのような点に注意すれば良いのだろうか」といった疑問や不安を感じることもあるかもしれません。
この記事では、代替食品を家族の食事に取り入れる際に、食物アレルギーに配慮するために知っておきたい基本的な情報と、安全に楽しむための具体的な注意点についてご説明します。
代替食品の種類と含まれる可能性があるアレルゲン
代替食品と一口に言っても、様々な種類があります。それぞれ主な原材料が異なりますので、含まれる可能性があるアレルゲンも変わってきます。
- 代替肉: 大豆、小麦、エンドウ豆などの植物性たんぱく質を主原料とするものが多いです。大豆由来であれば大豆アレルギー、小麦由来であれば小麦アレルギーに注意が必要です。
- 植物性ミルク: 牛乳の代替として、大豆、アーモンド、オーツ麦、ココナッツなどを原料とします。それぞれ、大豆、ナッツ類(アーモンド)、穀物(オーツ麦)のアレルギーがある場合は注意が必要です。
- 代替卵: 主に植物性たんぱく質(大豆、エンドウ豆など)やでんぷん、植物油などを組み合わせて作られます。大豆などの原料によるアレルギーに注意が必要です。
- 代替チーズ: 植物性油脂(ココナッツオイルなど)やでんぷん、ナッツ類(カシューナッツなど)を原料とするものがあります。ナッツ類を原料とする場合は、ナッツアレルギーに注意が必要です。
このように、代替食品は特定の動物性食品のアレルギーを持つ方にとっては有用な選択肢となり得ますが、その一方で、別の植物性原料に起因するアレルギーを持つ方には適さない場合があります。
「アレルギー対応食品」と「代替食品」の違い
ここで、「アレルギー対応食品」と「代替食品」の違いについて整理しておきましょう。
「アレルギー対応食品」とは、特定の食物アレルゲン(例えば、卵、乳、小麦など)を使用せず、アレルギーを持つ方でも安全に食べられるように、原材料や製造工程に厳格な管理基準を設けて製造された食品を指すことが一般的です。
一方、「代替食品」は、必ずしも特定のアレルゲンを除去することを主目的として作られているわけではありません。多くの場合、動物性食品の代替として、植物性原料などを活用して開発されています。そのため、代替食品の中には、目的とする動物性食品のアレルゲンは含まれていなくても、別の植物性アレルゲンが含まれている製品が多く存在します。
したがって、代替食品は「アレルギー対応食品」とは異なるものであることを理解しておくことが大切です。代替食品を選ぶ際には、アレルギー対応食品を選ぶのと同様に、原材料や表示を慎重に確認する必要があります。
代替食品を選ぶ際に特に注意したい点
食物アレルギーをお持ちのご家族のために代替食品を選ぶ際には、以下の点に十分な注意を払うことが非常に重要です。
1. 原材料表示とアレルゲン表示の確認
最も基本的なことですが、製品パッケージの原材料表示を必ず確認してください。日本の食品表示法では、特にアレルギーを起こしやすいとされる「特定原材料7品目」(えび、かに、小麦、そば、卵、乳、落花生)と、表示が推奨されている「特定原材料に準ずる21品目」が含まれている場合は、表示が義務付けられたり推奨されたりしています。
代替食品の場合、例えば大豆ミートであれば「大豆」が特定原材料に準ずるものとして表示されているか、植物性ミルクであれば「アーモンド」などのナッツ類や「大豆」が表示されているかをしっかり確認してください。アレルギーのある食材が原材料として使用されていないかを、必ずご自身の目で確かめるようにしてください。
2. 「コンタミネーション」に関する注意表示
製品によっては、「本製品に含まれるアレルゲン」といった表示とは別に、「本製品の製造工場では、〇〇(特定のアレルゲン)を含む製品を製造しています」といった注意喚起の表示がある場合があります。これは「コンタミネーション」と呼ばれるもので、意図せずしてアレルゲンが微量混入する可能性があることを示しています。
アレルギーの症状が重い方の場合、このような微量の混入でもアレルギー症状を引き起こす可能性があるため、コンタミネーションに関する注意表示は非常に重要です。ご家族のアレルギーの程度や、医師からのアドバイスに基づき、これらの表示がある製品を避ける必要があるか判断してください。
3. 家庭内での「クロスコンタミネーション」の防止
製品自体にアレルゲンが含まれていない場合でも、家庭での調理中にアレルゲンが混入してしまう「クロスコンタミネーション(交差汚染)」に注意が必要です。
例えば、通常使用している調理器具(包丁、まな板、フライパンなど)にアレルゲンが付着している場合、洗浄が不十分だと、次に調理する代替食品にアレルゲンが移ってしまう可能性があります。アレルギー対応食を作る際は、使用する調理器具や食器を分けたり、十分な洗浄を行ったり、揚げる際はアレルギー対応食から先に揚げるなど、慎重な配慮が求められます。使用する油や調味料にもアレルゲンが含まれていないか確認しましょう。
4. 最新の製品情報の確認
代替食品の分野は日々進化しており、新しい製品が登場したり、既存の製品の原材料や製造工程が変更されたりすることがあります。そのため、以前購入したことがある製品でも、購入時には必ず最新のパッケージ情報を確認する習慣をつけることが大切です。
家族みんなで楽しむための工夫
食物アレルギーを持つご家族がいらっしゃる場合、食事の準備には特別な配慮が必要になりますが、代替食品を上手に活用することで、家族みんなで同じようなメニューを楽しむことも可能になります。
例えば、カレーやハンバーグ、ミートソースなど、通常ひき肉を使う料理に大豆ミートを使用すれば、アレルギーがないご家族も一緒に食べることができます。植物性ミルクを使えば、牛乳アレルギーの方もシチューやグラタンを一緒に楽しめるかもしれません。
調理の際は、アレルギー対応食を先に作り終えてから通常食を作る、盛り付けの際に混ざらないようにするなど、家庭内でのクロスコンタミネーション防止策を徹底することが前提となります。
また、新しい代替食品を試す際は、少量から始めたり、体調の良い時に試したりするなど、ご家族のアレルギーの状況に応じた慎重な対応をおすすめします。
まとめ
代替食品は、健康や環境に配慮した新しい食の選択肢として、私たちの食卓に多様性をもたらしてくれます。食物アレルギーをお持ちのご家族がいる場合でも、代替食品を活用することで、これまで難しかったメニューを楽しむ可能性が広がります。
しかし、代替食品は必ずしもアレルギー対応食品ではありません。安全に代替食品を家族の食事に取り入れるためには、製品の原材料表示やアレルゲン表示、コンタミネーションに関する注意表示を必ずご自身の目で確認すること、そして家庭での調理におけるクロスコンタミネーションを徹底的に防止することが不可欠です。
もし製品選びや調理法に関して不安な点がある場合は、自己判断せず、必ず医師や管理栄養士といった専門家にご相談ください。正確な情報に基づき、注意深く代替食品を選び、調理することで、ご家族皆様が安全で楽しい食生活を送ることができる一助となることを願っております。